体でわかる森の「癒し効果」
木々の中に立っていると、何もしなくともそれだけで心癒されますが、
さらに効果的に森林パワーを感じるためのキーワードがあります。
それは人間に備わっている5つの感覚「五感」です。
人間はもともと自然環境の中で生活していました。現代の人工的な環境での生活は、本来の人間の生活とは違い、大変なストレスを与えます。
森林セラピーはこのような環境からのストレスを改善するという点からも大きな効果を持っており、人々の心を癒すといわれています。
このような、心身に癒しを与える「森の力」を享受する方法として、最も基本的なやり方は「五感」を働かせることです。
森の中や周辺で耳や目、鼻、手足、味覚等の五感のアンテナを研ぎ澄ませて、木々の息吹や風のざわめきを感じてください。
そして、その中でいちばん自分に合ったリラックス法を探してみましょう。
人によって心地よく感じるポイントは異なりますが、自然の中で本来あるべき場所にいるという快適感を全身で感じ、楽しむことができるでしょう。
見る
森の風景を見ることで体が受けるリラックス効果は、とても大きなものです。
ただ森の緑を眺めるだけでも、血圧の低下や脳活動が鎮静化するなどの作用をもたらします。
また、日本人特有の間隔として満開の桜を見ることで脈拍が増し、わくわくする傾向があります。
聴く
一見静かな森の中でも、木立の葉が風に揺れる音や小鳥のさえずり、水の流れる音などが絶え間なく響き続けています。
ささやかなこれらの音を聞くことによって、人間の体では血圧の低下や脳活動の鎮静化などの効果が起こることがわかっています。
目を閉じることで、耳への意識を集中させてみてください。
嗅ぐ
香りが脳に働きかける作用は直接的で大きいものです。
特徴的なスギやヒバといった木の香りは血圧や脳の活動を鎮静化させ、怒りや緊張などを緩和させる効果があります。
また、大きく深呼吸することで、森林にたくさん放出されているフィトンチッドを取り入れることができます。
触る
手のひらや足の裏で、木の葉や木の幹に直接触れてみましょう。
人工的な素材ではなく、自然由来のものに触れることで、よりくつろいだ感覚や心地よさを感じることができます。
気に入った巨木が見つかったら抱きついてみましょう。心を落ち着かせる作用があり、おすすめです。
味わう
森は有機物の宝庫。森林セラピーの認定地の中には、木の実やキノコ、湧き水などを味わうことのできる森があります。
新鮮で力強い大地の滋味を口にすることで、心の充足感はもちろん、体にもよい効能を享受することができます。
季節に応じた森の恵みを堪能してください。
- 運動量は平日の運動量を目安に、自分の体力に合わせて疲れないスケジュールを立てましょう。
- 散策は、1日の場合は4時間5km、半日の場合は2時間2.5kmが目安です。
- 疲れが出たら随時休憩し、のどが渇いたら水分補給しましょう。
- 五感を働かせて、全身で森林を楽しみましょう。
- 自分の好きな景色(場所)を見つけましょう。好きな場所を見つけたら、そこで読書したり、景色を眺めたりしてください。
- 余裕があれば、森林セラピー後に温泉に入りましょう。
- 癒しの効果の目的に応じて滞在期間を選択しましょう。
- 免疫を高める目的なら、2泊3日のスケジュールがおすすめです。
- リラックスの目的なら、日帰りでも有効です。
- 森林セラピーは健康な人に対する疾病の予防です。病気の場合は、病院を受診してください。
森林セラピーソサエティ理事 李卿(日本医科大学付属病院 医師)
森での時間をより充実させるために
明るく爽やかな森の中を歩く時間は、それだけで心と体を癒してくれるものです。
森林セラピーの森は、多くの方々に対応したさまざまなタイプの森によって構成されています。
森林セラピーに訪れる前には、自分自身の心と身体にフィットするものを身につけるようにすると、
よりリラックスして、また満足感のある充実した時間を過ごすことができるでしょう。
自分自身の感覚や体力に合っていて、最もリラックスして楽しめる森林セラピーの森を探してみましょう。
森林浴を楽しむポイント
安心できる森をえらぶ
森林があれば、どこでも森林のリラックス効果が得られるとはいえません。
騒音や汚染があったり、歩きにくかったりしては、安心してリラックスをすることができません。
「森林セラピー基地」「セラピーロード」は、誰でも安心して森林セラピーを体感できる森が認定されています。
また、森林セラピーの森を知り尽くした案内人と一緒に歩くことは、安心感を高めるとともに、
あなたの好みに合わせた案内を通して、リラックス効果を増大させてくれるでしょう。
自分の好みをみつける
リラックス効果には個人の価値観が大きく反映されますので、自分が好きな森林セラピーの森を見つけて森林浴をすることが最も効果的です。
いくつかの森林やロードの特徴を調べてみたり、実際にコースを歩いてみることで、
四季折々の森の風景や鳥のさえずり、樹木の香りや涼しいそよ風など、雰囲気を含めた森林の全体を
私たちが持っている「五感」を活かしてじっくり体感してみましょう。
そして、様々な森林セラピーの森で提供されるプログラムを通して、自分はどんな所で落ち着くのか、どんな森林との関わり方が最もリラックスするのかなど、 自分の価値感や趣味に合ったスポットを探してみましょう。
ゆっくりと過ごす
森林セラピーの森には様々なメニューがあります。
色々なメニューを楽しみながら、健康づくりやリラックスをすることができます。
森林がもっているリラックス効果を活かすためにも、あまり時間にとらわれないことが大切です。
ゆったりと過ごすなかで自分自身の心と対話をすることが、さらにリフレッシュするための方法になります。
そして、ゆっくり自分自身と向き合いながら、美味しい空気を全身で吸い込み、健康的な旬の食事をし、
適度な運動を通して規則正しい生活リズムを徐々に取り戻すことで、豊かな日常生活にも繋げていくことができることでしょう。